12月の補正予算案に盛り込まれている地域医療再生基金の民主党視察で、今月はじめに旭市の旭中央病院に行ってきました。
地域医療再生基金は、緊急医療体制の不備による患者のたらい回しや、医師不足、地域間の医療体制格差など、崩壊し始めた我が国の医療体制を立て直すため、今年春、国会に提出された2009年度補正予算案に盛り込まれ可決されたもの。
全国に369ある二次医療圏(説明:下記)のうち、各都道府県ごとに2箇所(合計84)を対象に、上限25億円ずつの再生資金が公布されるもので、交付を受けるには、各都道府県が、医師の確保や救急医療体制の充実、勤務医の労働環境改善などをどのように行っていくのかを具体的に盛り込んだ「地域医療再生計画」を策定しなければなりません。
千葉県では、「地域医療再生プログラム」がそれにあたります。計画の対象となる二次医療圏は、市立病院の休止で、公的医療崩壊の象徴のように大きく報道された銚子市が含まれる香取海匝保健医療圏と、47万人もの人口を抱えながら救命救急センターがない山武長生夷隅地区。前者は、「それぞれの医療機関の役割を明確に定め、患者の立場を踏まえて相互に連携・ネットワーク化を図る」モデル地域、後者は、「住民の生命・健康のセーフティーネットとしての救急医療の対応・搬送システムの確立」のモデル地域です。
視察先の旭中央病院は、香取海匝保健医療圏の地域医療再生の中心的な役割を果たす医療機関です。
この医療圏に含まれる7市町のうち6市町は、各自治体と県が運営するほぼ同規模・同機能の医療機関があるものの、人件費・医療材料費などの比率が高く、銚子市立病院が休止に追い込まれたことでもわかるように、厳しい経営状況が続いています。
一方で、旭中央病院は、圏内1の規模の大きさや医療圏の40%の緊急患者を受け入れていることなどから、自治体が経営する病院で全国1位の外来患者数(1日3507人)、全国2位の入院患者(868人)を抱えて、パンク寸前という状況だそうです。
計画では、旭中央病院の一般外来を縮小して紹介外来に専念、高度で難易度の高い手術などに対応していくとともに、地域の公的病院は、連携拠点病院として、「この病院は人間ドッグとリハビリ」、「この病院は2次救急と手術」など、それぞれ役割を明確にしていくことになっています。また、地域医療の担い手である診療所は、かかりつけ医として、普段の健康管理や病状に応じた拠点病院への振り分け、そして高齢化社会に欠かせない在宅医療を担うとのこと。
こうした役割の明確化で、連携の取れた医療のネットワークを医療圏全体に張り、地域医療再生を目指すということでした。
この秋、「千葉県資源・エネルギー問題懇話会」の視察で九州に行きましたが、民主党有志で一日前に出発して、熊本市の「熊本地域医療センター」にも行って来ました。
熊本市は、「熊本方式」と呼ばれる小児救急医療のモデルを確立しています。熊本方式とは、地域医療センターを拠点に、大学所属の小児科医、病院の小児科勤務医、小児科開業医が、当番制で緊急医療にあたる「出務式」をいち早く(1981年開始)採用したもので、
現在では全国250か所以上の小児救急施設で、この熊本方式が取り入れられているそうです。
崩壊しつつある地域医療の再生は、様々な要因が絡み合う大きく困難な課題ですが、その解決は、最重要・最優先されなければなりません。千葉ではじまる地域医療再生の取り組みが、近い将来「千葉方式」と呼ばれるものになるよう、引き続き注目していきたいと思います。
二次医療圏
特殊な医療を除く一般的な医療サービスを提供する医療圏で、「地理的条件等の自然的条件及び日常生活の需要の充足状況、交通事情等の社会的条件を考慮して、一体の区域として病院における入院に係る医療(前条に規定する特殊な医療並びに療養病床及び一般病床以外の病床に係る医療を除く。)を提供する体制の確保を図ることが相当であると認められるものを単位として設定すること」(医療法施行規則第30条の29第1項)と規定されている。
複数の市町村を一つの単位として認定される。(出典→wikipedia)