「一億総中流意識」を基盤にした安定社会は、はるか過去のものとなり、「格差」という不均衡な土台の上で現代社会は、グラグラと揺れ続けています。
不安定な時代を背景に、子どもたちを取り巻く環境は、年を追うごとに過酷さを増すばかり。17歳以下の子どものうち6人に1人が「相対的貧困」(世帯収入が平均の半分以下)家庭にあり、児童虐待やネグレクトも増え続けています。また、子どもが自ら命を絶つようないたましい「いじめ」問題は繰り返され、不登校の児童・生徒の数は、減る兆しすらありません。
子どもを守るプラットフォームとして、また、格差社会の根本的な解消策である「教育」を提供する場として、学校が担う機能の拡大を提言したいと思います。
教える場所から育む場所へ
言うまでもなく、公立の小・中学校は、義務教育を行うための教育機関です。しかし、「教える場所から、育む場へ」と、社会の期待がシフトしてきていると考えています。
冒頭に述べた通り、子どもを取り巻く環境は、年を追うごとに苛酷になり、もはやどこから手をつけていいかわからないほど、大きくなっているようにも思えます。
学校が行うべき事柄と、家庭が担うべき役割は、常々議論されてきましたが、線引きをしたところで、つらい環境にある子どもたちが減ることはないことは、明白です。
また、制度上は子どもを守る様々なセーフティネットが整備されているはずが、コーディネートができず機能していない事例が多々あります。子どもの変化に気づく機会が多いのは学校です。学校の相談窓口としての機能強化を行い、各学校が子どもを守るプラットフォームとして機能するよう、可能性を拡げていくべきと考えます。
中学から高校・大学へ公立の教育パス
貧富の差なく、公正に教育を受けることができるように整備されているはずの国公立高校・大学。しかし、公立の名門学校に入るには、大金を払って、塾や家庭教師に頼る必要があるのが現実です。
公立中学から公立高校へ、そして公立大学へと続く教育パスは、経済的な理由で進学をあきらめずに済む希望の道です。その道を歩む子どもたちへの支援策として、アクティブスクールの拡充を提言します。
これまでのアクティブスクールは、どちらかといえば、学び直しの支援でしたが、具体的な目標感を持った生徒の進学支援もあわせて行えるよう、制度を見直して行く必要があると考えています。県内では毎年、たくさんの先生方が退職を迎えています。そうした人的資源を有効に活用すれば、不可能ではないはずです。更に、この試みを市町村と連携し、公立中学校まで拡げることができれば、子育て支援策としても歓迎されると確信しています。